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豪快だけど、優しな『手』。師匠からもらった大切な形見。

こんにちは、六代目彌市です(^^♪

ここ最近、ブログ更新がすっかり止まってしまっておりますが

身体はおかげさまで元気です!

 

ただ、なぜか?

書く「エネルギー」が湧いてこないのです。

 

これまで10年で1000記事以上も書き続けてきて

何で今さら書けなくなったのか??

 

さっぱりわかりませんが、

これまでどんな事に挑戦するときも自分自身の中にある「流れ」を大事にしてきたので、

今は無理に書こうとせず、書きたくなったらまた復活してまいりますm(__)m

 

ただ、今日は

そんな中でもどうしても書かなければならない事がありペンをとりました。

 

大切な大切な『師匠』との別れ。

私に直接『桶作り』の指導をしてくださった師、

愛知県は一色町に3代続く桶屋として生まれた『永谷浴槽』の永谷さん。

 

87歳にて永眠されました。

 

師匠との思い出は、いっぱいあります。

伝えたいことも、いっぱいあります。

 

なので上手くまとめる自信がないので、

今日は、あの頃を思い出しながら

思い出したこと、大切な事、決して忘れないように書き綴っていこうと思います。

 

私が本気で桶屋に習いに行く本当の理由。

私が、いよいよ五代目から代表の座を渡され、

三浦太鼓店の新社長となった2016年1月のことでした。

 

そこから、私の『桶職人』という新たな挑戦!

今振り返れば、そこから始まる壮大な人生の分岐点のドラマがスタートしたのです。

 

あの時、どんな気持ちで私は新しい挑戦をしたんだろう?

自分自身で思い起こしているうちに、

 

当時の想いを綴ったブログ記事が出てきたので、

まずはこの記事を読んでもらいたい。

 

——————————————-/

第一章/

私が本気で桶屋に習いに行く本当の理由。
~2016年1月~

こんにちは、六代目彌市です(^^)/

早くも、桶屋修行4日目になりました。

 

1週間に1度くらいのペースですが、それでも着実に進んでます!

いよいよ、今日は胴の中を仕上げカンナ削りをし、そして“タガ”を組みました。

 

胴の中も丁寧にカンナ仕上げ♬

 

そして何度聞いて、何度習ってもいまだにうまくいかない“たが”を組む作業( ;∀;)

 

本当に難しいです。

本当に地道です。

 

“地道”が“近道”

私が本気で桶屋修行に来ている理由はそこにあります。

では、私にとっての“近道”とは何だと思いますか?

 

それは、本当に大切なものは“何か”という事を

肌身をもって体感することにあります。

 

まだまだ短い私の人生ではありますが、

そんな中でもいろんなことに挑戦してきました。

 

そこで一つ見えてきた世界があります。

それは、物事には決してブレてはいけない“本質”があるということ。

 

例えば、

人と人との関わりもそう。

 

価値観や環境、育ちの違う人同士が関わりあう中で

大切にしなければならない人間同士の“本質”がブレてしまうと、、、やはり争いが起きてしまう。

 

例えば、ビジネスもそう。

目先のお金や利益、自分たちだけが良ければいいという考えだと、

いずれどこかに歪がやってくる。

ビジネスの本質は単に“利益”ではなく、世の中の人の為になるということ。

 

例えば、太鼓もそう。

こういう時代ですからね、安価なコピー製品や

姿カタチは太鼓のようでも、まったく素材や材質の違うモノも多く出回っている。

 

和太鼓の本質は“音”。

姿カタチが太鼓であっても、中身が違うと不思議なことに“活きた音”は生まれてこないのです。

 

いろいろやってみて、

いろいろ挑戦してみて、そんなことが私なりにだんだんと見えてきました。

 

物事には、決して変えてはいけない、変えることのできない『本質』がある事を。

 

ただ、残念なことに時代の変化とともに、人々のニーズ、社会環境が変化し

いくらすばらしい本質を兼ね備えたものであっても“守る”ことが難しいということを実感しています。

 

桶屋さん。私の師匠は80歳を過ぎてます。

 

 

全国にも、桶職人というのは今や数えられるほどしかいなくなっている現実があります。

この“音”を本気で守りたいと思ったとき、必死になって全国各地の桶屋さんを探し歩いてきましたが、どこも非常に厳しい状況でした。

 

だから、最後の最後これは自らやるしかないと奮い立ったのです。

私は守りたいのです。

 

“技術”や“カタチ”を守りたいのではなく、その中に宿る物事の“本質”を守りたいのです。

積み重ねられた『伝統』、古き良き日本の『文化』の中には素晴らしい価値と“知恵”が宿っています。

でも、失うのは一瞬です。

 

積み重ねられた歴史はお金で買う事なんかできません。

 

“タガ”を組み、しっかりと締め上げられた初めて師匠と作った1号機!

いよいよ完成です(^^

 

一つ作ってみてわかりました。

姿カタチ、見た目はマネできてもやっぱり、

その中に宿る積み重ねられた“知恵”までは決してマネできないんだと。

 

“地道”は“近道”

私はこの桶作りに残りの人生をかけるだけの“価値”があると確信しています。

2016年1月
六代目彌市

————————————–/

 

今、振り返れば

この時の決断は間違いなくその後の私達の人生を大きく左右するモノでした。

 

この時、師匠と最初に作った桶太鼓の音♬

これが今の私の桶作りの『原点』です。

 

 

第二章/

豪快だけど、優しな『手』
~師匠からもらった大切な形見~

師匠は、仕事は豪快だけど、

いつも愛に溢れた優しい『手』をしていました

 

どれだけ、仕事が豪快とはどういう事かと言うと( ;∀;)

 

桶を作る時、特に『タガ』を入れる時!

師匠はまさにアクロバティックな職人技を見せてくれていました( ;∀;)


・三六-SABUROKU-のタガを入れる師匠⤴まさにアクロバティック!

 

これが80歳を越えた老人には見えませんよね( ;∀;)

まぁとにかく声も大きくて、よく食べて元気な人でした。

 

ある時、あまりに元気なもんだから、

師匠!師匠ってなんでそんなに元気なんですか?って私が聞いたら

 

そんなもんカンタンやないか!

元気がないヤツ(友達)らがワシより先に死んでっただけだわって(笑)

 

確かに~!って、まぁ何とも説得力ある言葉が返ってきたのをハッキリ覚えてます♬

 

そして、これが師匠の

 

この『手』、にじみ出てますよね。

よく『目は口ほどに物を言う』と言いますが、

私は『手は口ほどに物を言う』と思っています。

 

人の『手』というのは、その人の『人生』や『生き様』がにじみ出るのです。

 

太くて豪快、でもとってもとっても優しくて暖かい師匠の手。

私が何か伝えようとしなくても、この『手』を見てもらえれば、

師匠の苦労も、生き方も、職人魂もすべて感じてもらえると思います。

 

すべてを包み込んでくれるようなそんな師匠の『手』のごとく、

私のような若造に、師匠は分け隔てなく、包み隠さず

 

その『技』も、

大切な『道具』までも与えてくださったのです。

 

ご存知、桶作りには様々な道具を使いますが

特によい桶をつくるに欠かすことができないのが『カンナ』です。

 

その中でも、『正直カンナ(正直台)』と言って

特に重要な役目をする長~いカンナがあるのですが、

 

当然、桶作りをはじめたばかりの私は

こんな特殊な『カンナ』はありません。


・これが正直カンナ⤴
桶太鼓づくりに欠かすことができない大切な道具。

 

師:

おまん、桶をこしゃる(作る)なら正直台いるやろ?

これ持ってけ。

 

私:

いいんですか?

こんな大切な道具をお借りして、、、

 

師:

おおええよ、

いつか、ワシが死んだら母ちゃんにちょっとばかりのお礼を渡してくれたら

おまんがそれを使えばいい。

 

半分冗談のようで、

半分真剣に話してくださった師匠のことばが、とうとう現実になってしまいました。

 

 

 

私、あらためて思うんです。

そもそも、『桶づくり』をどうして私がやりたい!って思ったか?

 

それは、そこに『本当の音』があったから。

 

そして、

その『本当の音』を守り続けてきた人に出会えば、

そこには、『本物の生き方』がありました。

そんな『本物』に触れた時、人は心から感動するのです。

 

今、時代は、大きな大きな転換期を迎えています。

 

本当の豊かさとは何か?

本当のしあわせとは何か?

 

誰もが迷い、もがき苦しんでいます。

 

私自身も、ここ数カ月

やはり迷いもがき、苦しんでしまいました。

 

どれだけ、時代が変わろうとも

変わらぬ大切なモノがあると教えてもらったにも関わらずです、、、

 

『正直カンナ』という道具の名前の由来は、

職人の腕が『正直』に出るからという意味で名付けられたそうです。

 

きっと、私の心がブレてしまえば

この道具を扱う事はできなくなるでしょう。

 

そうならないように、

大切なことを見失わないようにと、

 

師匠は、何より一番大切な道具を

私に与えてくださったのかもしれません。

 

 

師匠、安らかに。

心からのご冥福をお祈り申し上げます

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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この記事を書いた人

  • 三浦 和也(六代目彌市)

    三浦 和也(六代目彌市)

    (昭和55年1月25日岡崎生まれ。AB型。和太鼓零〜ZERO〜代表)
    和太鼓と嫁に年中夢中!
    実は、長男ではなく次男坊。幼い頃は太鼓も親父も嫌いだった私が太鼓に目覚めたのは24歳の時。
    敷かれたレールが目の前になかったからこそ、今描ける野望は和太鼓を通して、世界を救うこと!4人の息子たちもみんな太鼓打ち!受け継いだ大切な「伝統」を後世へとつないでいきたいと思っています。

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