
六代目ブログ
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「小」は「大」を叶える。
こんにちは、六代目彌市です。
さかのぼる事、
今から3年前の2022年6月。
遠く青森からいただいた
「一本」のお電話から始まった壮大なプロジェクトも!
ようやく、一つの
完成を見ることができました。
青森ねぶた祭り「出陣」の大太鼓。
その名も『出世大太鼓』張り替えプロジェクト♬
・青森ねぶた祭り出陣で打ち鳴らされる『出世大太鼓』張り替えプロジェクト♬
巨大な皮を探すところから
スタートして3年。
施主の藤本建設さんは、
太鼓のためなら、牧場で牛を育てるのだと、、、
それだけ強い「想い」と「覚悟」でした。
そして、受け止めてしまったその「想い」。
受けてしまった以上は
逃れられない幾多の困難を、
時に悩み、もがき、苦しみ、、、
それでもみんなで
力を合わせて一歩ずつ、一歩ずつ、、、乗り越えて行く。
そんな、壮大なプロジェクトも
ついに先日、現地青森にて
完成した皮を現地の胴体に設置し!
この3年積み重ねてきた努力が
実を結ぶことができた事、ここに皆様にご報告いたします。
お電話いただいた3年前、
できるのか?できないのか?
と言うよりも、
とにかく、困っている事だけは
ヒシヒシと伝わってきて、、、
そのままお電話口だけで
申し訳ありません、、、、
とはお断りできず、
お話だけでも聞きましょうか、、、
と始まったプロジェクト。
今日は、最後の大仕事として大切な
「記憶」を「記録」に残すこと。
「今」の心境を「言葉」にしてみたいと思います。
正直、
私の中にある「感動」が大きいあまりに
どうやったらこれを「言葉」に表現できるのか、、、
そう思うと、なかなか
書き残す勇気も湧いてこなかったのですが、
そんな言い訳をして、
最後の最後に、
大事な仕事から逃げてしまったら
誰より自分たちに申し訳ない。
完成した、
出世大太鼓の響きを聞いた、あの瞬間の「感動」♬
そして、
この3年間の「経験」を通して
今、私が感じていることを
今日は素直に言葉にしたいと思います。
「小」は「大」を叶える。
私は現地、青森に行くまで
ずっと「不思議」に思っていたことがあったんです。
それは、今回
私たちはこの10尺(直径3.1m)の
巨大な皮を作ることに挑戦させていただきましたが、
出世大太鼓は、太鼓の種類で言えば
巨大な「桶胴太鼓」。
さて、この巨大な「桶胴」は一体誰が?
どうやって作ったんだろう??ということ。
今回、皮を張り替えるに
現地青森にてこの「桶胴」の中を見ることができたのですが、
そこには、
この「桶胴製作者」としてお二人の名前が刻まれておりました。
作られたのは、
今から50年以上前のことなので
残念ながら、
お二人ともご存命ではありませんでしたが、
この巨大な桶を作られたお一人である
「小笠原」さんには、後継者の方が桶づくりを受け継いでおり
今回の旅で、
その後継者の方とお会いでき、
直接、お話を聞くことができたのです。
小山内さんは、現在48歳。
よって、この出世大太鼓が作られた時は
まだお生まれになっていなかったので、
当然、桶づくりには
直接関わられた訳ではありませんでしたが、
師匠である「小笠原」さんから、
どうやって作ったのか?を聞かされていたそうです。
そして今回の旅で、
どーーーーしても!聞いてみたかった
この疑問をぶつけてみたのです。
———————-/
桶太鼓と言えども、
そもそも!この大きさともなると
「太鼓」というより「建築物」レベルの巨大な物体!
一体、当時の人たちは
どうやってこの巨大な「桶」をカタチにされたのでしょうか??
・私も同じ桶職人として、どうやって作ったのか不思議で仕方なかった。
すると、
想像もしなかった答えが小山内さんから返ってきたのです。
———————/
三浦さん、
実は、大きいからと言って、
何か特別に新しい「製法」や「技術」を使った訳では決してありません。
むしろ、
自分たちができることは、
今まで通り「伝統」の製法で作ることしかできなかったので、
扱う「素材」や「大きさ」こそ大きくなれども、
これまでの作り方は
一切変えることなくそのままカタチにしたのです。
むしろ、そうでなければ
カタチにする事なんてできませんでした。
———————/
と、、、、
・大きさがどれだけ大きくなっても、変わらぬ製法で作ったからカタチにできた。
私は、このお話を聞いて、
なるほど〜!!!!!!!
と、これまでに疑問が全て解け、
腹にストーン!と納得できたのです。
私は、
このお話を聞くまでは、
建築士のような人たちがいて、
その人たちのアイデアや発想を取り入れ
特別な「設計」や「製法」を
生み出してカタチにしたのでは?
と思っていたんです。
なぜならそれは、
先にも言った通り
あまりにも巨大で建造物のような大きさの
「桶」だったので、
そう思わざるを得なかったのです。
でも、
決してそうではなくて、
どれだけ大きさが大きくなろうとも、
これまで通りの「伝統」の作り方で
一つ一つ作業を積み重ねてカタチにしたのですと聞いて、
なるほど〜!
そういうことだったのか!!
と、ようやく全てに
納得することができたのでした。
なぜならば、
そのお話を聞いてから
改めて、この巨大な桶を見ると
大きさこそ!巨大であるけれども、
全ての素材やカタチが、
我々が日々手掛けている伝統の「桶」と
何一つ変わらないことが見えてきたからです。
振り返れば、
今回、私たちが挑戦した「皮づくり」も
結果として同じだったんです。
製作前は、
この巨大な皮をどうやって加工すれば良いのか??
それこそ、
何か新しい道具や技法を使わなければできないのではないか??
安易な発想で、
皮の加工をしてみようと色々チャレンジしてみたのですが、
すぐに、それでは
うまく行かない事がわかって、、、
結局どうしたかというと、
どれだけ大きい皮だろうが、
どれだけ大変な作業だろうが、
どれだけ時間が掛かろうが、、、
これまでと変わらぬ「伝統」の製法で向き合うしかない!
という結論だったのです。
人間、誰しも
向かおうとしている目的地が遠ければ遠いほど、
また、
その壁が高ければ高いほど、
どこかに近道はないのか?
どこかに抜け道はないのか??
そう思ってしまうこと、
きっとあると思うんです。
でも、
そんな大きすぎる目標や、
高すぎると感じる壁も、
それを越えるための唯一の方法は、
今、目の前にできることを一歩ずつ積み重ねる以外に方法はないのかもしれません。
言い換えるなら、
今、この瞬間にできる
本当に小さいと思えること、
その目の前の小さなことを積み重ね続けることこそが、
大きな目標へ辿り着くための唯一の道であるということ。
よく、
大きいものは、小さいものの代わりとしても使える
という意味のことわざで、
「大は小を兼ねる」と言いますが、
私は、今回の
このプロジェクトの経験を通して
小さいものの積み重ねが、大きいものへ辿り着く唯一の道であること。
「大」は「小」を兼ねる
ではなくて、
「小」は「大」を叶える。
そう、強く確信することができたのです。
・小さなことを積み重ねることが、大きなところへ辿り着く唯一の道。
・我々には、その積み重ねてきた確かな「伝統」という歴史があった。
今回の経験を通して、
本当に強く確信を得ることができました。
きっと、
この先も遠く険しい困難な道はやってくる。
きっと、
この先も不安や迷い道はやってくる。
でも、
目指すゴールへ辿り着く「唯一」の道は、
「今」できることを一歩ずつ積み重ねるだけ。
それが、いつか
目指すゴールに必ずつながっている。
そう信じて、進みたい。
そうやって、
「今できること」を積み重ね続け、
完成した新たな出世大太鼓の最初の響き。
生まれたばかりの
その新たな「音」を聞き、
打ち頭の稲葉さんが
たった一言、伝えてくれたメッセージ。
・組み上がった太鼓の音色を聞いて、たった一言伝えてくれたメッセージ。
打ち頭の稲葉さん、
たった一言。
———-/
「良い」
———-/
と、伝えてくれたんです。
それは、
ただ音が良かったということではなくて、
ここに辿り着くまでに歩んできた
我々が挑戦してきた道が間違ってなかったんだ!
という「良い」に、
私は聞こえました。
2025年夏。
記念すべき出陣50回目となる出世大太鼓は、
新たな響きとして生まれ変わり、
また新たな歴史を刻んで行きます。
改めてここまで、
本当に多くの方々のご支援とご協力があってたどり着けたこと!
心から感謝いたします。
大きな目標が叶った今、
我々も次なる高みを目指して一歩ずつ。
感謝。
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